おだやかな”生きる”を支えるために
年間入院延べ日数が0日に!
なごみの郷では、介護の質向上のための取組みの実践で、特別養護老人ホームにおける年間入院延べ日数0日(2022年度)を達成しました。また、入院延べ日数の減少と合わせ、年間救急搬送件数も0件(2022年度)となり、「おだやかな”生きる”を支えたい。」というなごみの郷サービス理念実現に向けたチャレンジを続けています。ここではなごみの郷が取組む「観察力向上」と「情報の質向上」についてご紹介します。
■ 観察力向上へのアプローチ
なごみの郷では、利用者の皆様の小さな状態の変化を見逃さずにキャッチすることのできる力である観察力を、介護スタッフも看護スタッフも管理栄養士も相談員も、多職種のスタッフ皆がつけるよう2つのアプローチを行いました。
- JCS(ジャパンコーマスケール)を共通言語化し、意識状態の変化を見逃さない力をつける
- 疾患別、症状別、状態別観察項目を知る力をつけ、状態変化を早期発見、見逃さない力をつける
JCSを共通言語に
JCS(ジャパンコーマスケール)とは、覚醒を軸に誰もが同じように意識状態を把握・評価できることを目的に開発された指標です。
なごみの郷ではJCSの確認テスト実施や、実際の意識レベルを多職種で何度も確認し共有したり、常にJCSを確認できる環境を作るなどし、JCSを共通言語化させました。JCSが共通言語となることで、これまで表現が曖昧でどのレベルの意識状態なのか把握が難しかったことが改善し、しっかり意識状態を把握できるようになり、次の対応判断を早期に行うことができるようになりました。また、個人の差による判断基準の差異(ズレ)も解消することができ、誰もが状態変化を把握し見逃さない力をつけることができました。
疾患別、症状別、状態別観察項目を知る力をつける
利用者の皆様の状態変化を早期に発見し、見逃さない力をつけるため、疾患別や症状別の観察項目を知る力をつけるためのアプローチも行いました。疾患ごとに意識しなければいけない状態変化を見逃さないための観察項目を事前に学ぶことで、変化に気づき、早期対応が可能となります。このアプローチにより、これまで原因不明の症状が現れていた方に対し、スタッフの観察力によって原因疾患が判明し、その疾患に対しての医療的処置が可能となったことで、その後はそれまで現れていた症状が現れることなく安定するなどのケースもありました。
■ 情報の質向上へのアプローチ
質の高い情報をキャッチし、正しく伝え、正しく読み取ることのできる力をつける、情報の質向上に対しても、2つのアプローチを行いました。
- 介護記録の標準化と共通言語化で情報の質を向上
- ICTで情報の質とスピード向上
質の高い情報を
「憶測や感想」「ただ回数や量を表すだけ」の記録から、誰もが同じ基準で客観的に評価し記録することができるように「介護記録の標準化」と「共通言語化」に取組みました。例えば、便の性状(硬さや形状)判断は、ブリストルスケールで統一し、スタッフごとにズレのあった表現や評価基準を統一し客観的な記録とさせました。また、5W1Hの活用も記録の中で標準化し、動作や介助量がわかるような記録表現とすることで、状態変化やいつもと違った時の情報が、誰が見てもわかる記録となり情報の質が向上しました。更に、みんなが状態把握するために”あった方がいいだろう”という状態表現項目を多職種で検討し、それをなごみの郷の共通言語としました。共通言語の浸透で、表現の差異(ズレ)がなくなり、全員が記録から状態把握ができるようになったことで、看護スタッフも介護スタッフの記録をみてすぐに優先順位を把握でき対処することが可能となりました。
ICTで情報の質と共有スピードの向上を
例えば、走っていた子供が転びヒザから出血してしまった場合、ある人は「ヒザから少し血が出ている。」と言い、ある人は「ヒザからすごい血が出ている。」と、人の感覚の違いにより、その情報が異なった伝わり方をしてしまうことは、日常生活の中でもよくあることではないでしょうか?なごみの郷では、そんな以前なら言葉で伝えられてもわかりづらかった情報を、画像や動画で共有し、目で確認が必要な情報の質を、ICTで見える化して向上させ、判断の迷いをなくし、次への対応を判断するためのスピードも向上させました。ICTはその他にも、様々な場面で活用され、介護の質向上のために活躍してくれています。(和敬会が取組む介護テクノロジーに関する詳細は、「最先端の介護テクノロジーで未来介護へチャレンジ」の記事をご覧ください。)
年間入院延べ日数0日に
なごみの郷では以上の取組みの結果、年間入院延べ日数が0日となるだけでなく、救急搬送件数も0件となり、利用者の皆様へおだやかな日常の提供をさせていただいています。当然、医療的に必要な入院もあるため、様々な要因が重なった結果が2022年の結果ですが、防げたであろう入院を介護の力によって防ぎ、利用者の皆様におだやかな”生きる”を実感していただけるよう、これからも介護の質を高める取組みを続けて参ります。
※この取組みは、「おはよう21(2024年7月号)」においても誌面紹介されています。